犬山周辺カメラ撮影ガイド   撮影及び文:青山松之(犬山市)
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犬山周辺カメラ撮影ガイド(3)  
犬山周辺の桜


 
咲けば散る 咲かねば恋し 山桜 思ひ絶えせぬ 花の上かな        中務 
 春ごとに 花のさかりは ありなめど あひ見むことは いのちなりけり    よみ人しらず
 桜ばな いのち一ぱいに咲くからに 生命をかけて わが眺めたり      岡本かの子


   

円明寺のシダレザクラ
 
妙感寺のエドヒガンザクラ       北小学校のヤマザクラ

  犬山音頭で「尾張犬山は桜の名所・・・」とうたわれたように、かつては、旧国道41号や郷瀬川堤の
桜並木は県下有数の桜の見所であった。しかし、犬山の桜は老化がすすんだため、最近では大口町の五条川や各務原市の新境川が有名になり、いずれも「桜の名所100選」に選ばれている。現在、日本の桜の大部分はソメイヨシノという種類である。徳川時代末期に、江戸染井村で自生種のエドヒガンとオオシマザクラから作り出された栽培種であるが、花が豪華絢爛で飲めや唄えの賑やかな花見にふさわしい種類であるため、明治時代にまたたくまに全国に広まった。しかし、残念ながらソメイヨシノは寿命が短くせいぜい5、60年とのことである。今回はソメイヨシノ以外のこのあたりのの桜をご紹介しよう。

   
犬山市内で最も早く咲くのは、寺内町円明寺の枝垂れ桜である。3月下旬には満開になり、お祭りにはほとんど散っている。白い花で背が高いが、境内がやや狭く、電線や支柱があるのでよいアングルを選びたい。


天王坂のヤマザクラ

中将姫誓願桜
 
羽黒の笑面寺にも有名な枝垂れ桜がある。背は高くないが枝が四方に垂れ淡紅色の花をつける。4月初旬に開花し、いろいろな催し物も行われる。
 次もお寺で、山寺(犬山駅北方)の妙感寺にエドヒガンと思われる立派な桜がある。エドヒガンザクラは日本古来の自生種で、花が終わって茶褐色の葉がでる。大木になり、寿命も1000年を越えるものもある。(岐阜県根尾村の淡墨桜は樹齢1400年で日本2位という) 妙感寺の桜は以前、庫裏の前の狭い庭にあったが、数年前に本堂も庫裏も新築され、いまは広い庭にのびのびと立っている。
 丸の内の犬山北小学校校庭にソメイヨシノでない老木が2本ある。1本は校庭にあり、4月初旬に花だけが先に咲くのでエドヒガンと思われる。幹が斜めになって登りやすく、私が小学生のころは遊び場だった。最近では柵もでき、養生されているが、樹勢は衰えが目立つ。もう一本は正門脇にあり、ヤマザクラと思われ、花と同時に茶褐色の若葉が出る。開花期は4月中旬になる。
 天王坂の針綱神社お旅所にヤマザクラが数本ある。しかしいずれも周りが込み合って、構図がとりにくい。

  木曽川堤のヤマザクラ
   
犬山から外へ出てみよう。
 一宮市・木曾三川公園の木曽川堤の桜は、名勝・天然記念物になっている。ほとんどがヤマザクラ系で、4月上旬から中旬が見頃である。道路が狭く、車も多いのが問題だが、さまざまな構図が楽しめる。
残念ながら樹勢は全般に衰えつつあるようだ。
 岐阜市大洞(各務原市北部)の願成寺にある中将姫誓願桜は日本でもここだけの変種で、天然記念物になっている。名前の由来は省略するが、ヤマザクラ系でありながら白の八重桜である。開花期は4月初旬である。

うとう峠のヤマザクラ  

各務原市北東部の日本ラインうぬまの森に、うとう峠というところがある。昔、中山道は太田の宿から鵜沼宿まで木曽川沿いに
道がなく、坂祝あたりから山に入ってうとう峠に登り鵜沼に降りてくるルートになっていた。現在は鵜沼側のルートの数百メートルが
復元され、「うぬまの森」の一部となっている。
この道の両側にヤマザクラが多い。高所から眺めると、ちょっとした奈良・吉野山の風景である。吉野山は観光客や土産物屋で
混雑し、いささかヘキエキするが、ここは何もないので気分が良い。ヤマザクラ以外にもマンサクやコブシなどもあり、
ギフチョウもいるらしい。又この森の西北部に「みどりさん植樹の森」がある。各務原市に住む、みどり、緑、美登里、翠さん達が
いろいろな桜を植樹している。

     笑面寺のシダレザクラ 北小学校のエドヒガンザクラ
撮影ガイド

機材
 花を精密描写するには中型以上のカメラがよいが、35ミリフィルム使用カメラでもできるだけクリアでヌケのよいレンズを使いたい。(私の好き なレンズはコンタックス35mmF1.4である)PLなどフィルター類も活用したい。状況が許せば、三脚もできるだけ使用すべきである。

構図 花だけを撮るのか、周辺の風景なども取り入れるか、人物はどうするかなどは、撮影目的と撮影者の感性の問題である。私の場合、仕事で多忙なころは、できるだけ人物がはいらない写真をとっていたが、退職後ヒマになると人物が入っても良いと思うようになった。感性も変ってゆくものらしい。桜の撮影でいつも悩まされるのは、電柱、電線、看板類の処理である。いつか、北濃地方で立派なヤマザクラのすぐ傍に、夜間照明用の新しい電柱が立てられていた。「日本人は美しいものに敏感だが、醜いものに鈍感である」とは、たしか柳宗悦の言葉だが、やたらと何でもつくるのは問題だとおもう。
露出とプリント 花の色を正確に出すのは難しい。ポジフィルムの場合は正確に計測するか、段階露出で撮影すればメーカー毎の特徴は別にしてほぼ妥当な結果が得られる。しかし、ネガフィルムの場合は、露出数値とは別にラボでのプリント処理過程で色が変わってくる。色見本をつけて手焼きプリントを指定するなどは、普通はやれない。プリントの度に色が多少変わるのは止むを得ないと思う。


日本人は年をとるほど桜にたいする思い入れが深くなるようだ。私も全国の桜の名所・名木のリストをつくり、一昨年は北海道の函館、松前、昨年は、福島県、山形県の桜を訪ねた。今年はどこの桜に会いに行こうかと考えている。

のこりなく ちるぞめでたき 桜花 ありて世の中 はての憂ければ     よみ人しらず
散ればこそ いとど桜はめでたけれ うき世に何か久しかるべき       伊勢物語                             
さまざまの 事おもひだす 桜かな                         芭蕉
散る桜 残る桜も 散る桜                             良寛